「このグッズ、結婚したら全部捨てなきゃいけないの?」大好きなものを隠して、”パンピー”のフリをして生きることに疲れていませんか?
27歳の由佳は、平日はバリバリ働くシステムエンジニア、休日は推しの祭壇の前で涙する熱狂的なアニメオタク。過去の恋人に趣味を全否定されたトラウマから、恋愛市場では「ヨガとカフェ巡り」を装う”擬態オタク”として生きてきました。自分を偽り、クローゼットに宝物を隠してまで手に入れる幸せに、一体何の意味があるのか――。
これは、そんな「限界オタク」の彼女が、アプリを通じて自分の「好き」を丸ごと肯定してくれるパートナーに出会い、趣味も恋も”フルスロットル”で楽しめる最高の居場所を見つけるまでのストーリーです。自分を偽るのをやめたとき、人生という名の物語は、最高にエモい展開へと動き出します。
プロローグ:擬態オタクの限界
「趣味は、ヨガとカフェ巡り……かな」
合コンやマッチングアプリのプロフィールで、私は何度この嘘をついてきただろう。 27歳のシステムエンジニア、由佳(ゆか・仮名)。私の真の姿は、休日は全国を遠征し、平日の深夜は推しの祭壇の前で「尊い……」と咽び泣く、筋金入りのアニメオタクだ。
かつての恋人に「いい歳してアニメとか引くわ」「結婚するならグッズ全部捨てろよ」と、人生の半分である推しを全否定されたことが、消えないトラウマになっている。 それ以来、私は「パンピー(一般人)」に擬態して生きてきた。パステルカラーの服を着て、話題のスイーツの話に合わせる。けれど、心の中ではいつも推しの新譜や神作画のシーンがループしている。
(自分を偽ったまま結婚して、一生クローゼットの奥に薄い本を隠して生きるの?)
限界を感じた私は、最後に一度だけ、賭けに出ることにした。
第1章:属性開放、初めての「共鳴」
マッチングアプリの隅っこに、私は祈るように書き添えた。 『実はアニメや漫画が大好きです。自分の「好き」を大切にしている方と出会いたいです』
届くのは相変わらず「オタクっぽくないですね」という無神経な言葉ばかり。そんな中、IT関連の仕事をする直人(なおと・仮名)、29歳から一通のメッセージが届いた。
「由佳さんのプロフィール、すごく誠実で惹かれました。僕も実は特定の分野のオタクで……。何かを全力で愛せる人は、素敵だと思います」
初めてのデート。私は恐る恐る、推しの話をした。引かれるのを覚悟して、少しだけ早口で。 すると直人さんは、身を乗り出して言った。
「その作品、未履修ですが、由佳さんのプレゼンの解像度が高すぎて興味が湧きました。好きなことを語っている時の君、すごくいい顔をしてる」
属性開放(カミングアウト)して、初めて受け入れられた瞬間だった。
第2章:サンチピンチと「神対応」
仲が深まるにつれ、私の「悪い癖」が出てしまう。 デートの日と、推しの期間限定ショップの初日が被ったのだ。
「普通の女の子なら、彼氏を優先するはず。でも私は……」
罪悪感でパニックになった私は、つい彼に
「私、やっぱり恋愛に向いてない。推しを優先しちゃう欠陥品なんだ」
と自爆気味に別れを切り出しそうになった。 しかし、直人さんは笑って私の頭を撫でた。
「欠陥品なわけないでしょ。推しの供給は命に関わるもんね。今日は僕もショップに付き合っていい? 由佳さんの『戦場』を見てみたいんだ」
彼は私の「沼」を否定するどころか、一緒に浸かろうとしてくれた。彼という名の「神コンテンツ」が、私の人生にログインした瞬間だった。
第3章:脳内実況!初めての「合体事故」
ついに迎えた、初めての夜。 恋愛経験が少ない私の脳内は、オタク特有の語彙で大混乱(パニック)に陥っていた。
(待って、この至近距離は作画崩壊ゼロの神回。直人さんの視線のレイヤーが重なりすぎて、私のサンチピンチ(正気度)が限界突破してる……!)
彼の手が私の指に触れる。その熱さに、私のCPUはオーバーヒート寸前だ。
(このシチュエーション、完全に最終回前のクライマックスじゃん。BGMに神挿入歌が流れてる幻聴がする。いや、待て、私の身体、挙動不審すぎてバグってない!?)
パニックでガチガチになる私を察して、直人さんは耳元で優しく囁いた。
「由佳、実況しなくていいから。今は僕だけ見て」
その瞬間、脳内の実況スレがぴたりと止まった。 ゆっくりと重なる体温。推しのSSR(最高レア)を引いた時以上の心拍数。けれどそれは、画面越しでは決して味わえない、生身の人間だけがくれる「リアルな愛」の感触だった。 私は初めて、二次元の推しではなく、目の前の「直人」という存在に、全力で全力を預けた。
エピローグ:推しも、彼も、人生の「神運営」
それから一年。私たちの部屋の壁には、私の推しのポスターと、直人さんの趣味の模型が、仲良く並んで「共存」している。
「このキャラの、この伏線回収が尊いんだよ!」
と熱弁する私に、彼はコーヒーを淹れながら「なるほど、エモいね」と、まるで新作アニメを鑑賞するように優しく微笑む。
アプリで手に入れたのは、趣味を我慢する生活ではなかった。 自分の「好き」を何倍にも増やして楽しめる、最強のパーティメンバーだった。
かつての私に教えてあげたい。 クローゼットに隠さなくてもいいんだよ。あなたの「沼」ごと愛してくれる、最高のプレイヤーは、案外すぐ近くの画面の中にいるんだから。
今、彼は私の「夫」であり、人生という名の物語を共に攻略する、唯一無二の相方(バディ)です。

