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真っ赤な顔も、震える声も。アプリが繋いだ「一生ひとり」を覚悟した私の恋

真っ赤な顔も、震える声も。アプリが繋いだ「一生ひとり」を覚悟した私の恋|新しい自分へ 女性のストーリー

男性を前にすると、顔が赤くなって声が出ない」――恋愛をしたいだけなのに、体が拒否反応を起こして諦めていませんか?

25歳の紬は、極度のあがり症。子どもの頃のトラウマから、緊張すると言葉が音にならず、支離滅裂な挨拶しかできない自分に絶望していました。そんな彼女が選んだのは、画面越しに言葉を紡げるマッチングアプリ。顔を赤らめる必要のない世界で、彼女の「本当の声」を見つけてくれたのは、不器用な言葉の裏にある一生懸命さを愛してくれる、優しい男性でした。

 

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プロローグ:熱を帯びる、不器用な自分

「あ、あ……ああざぁす! っ……!」

……違う、そうじゃない。 「ありがとうございます」という、たった7文字が、どうしても、どうしても出てこなかった。

25歳の私、紬(つむぎ・仮名)は、駅のホームで自己嫌悪の底に沈んでいた。さっき、落としたハンカチを届けてくれた爽やかな男性に、きちんとお礼を言おうとしただけなのに。

頭に血が上り、視界がチカチカし、喉の奥がキュッと閉じる。全身の毛穴が開き、顔はゆでダコのように真っ赤に染まる。結果、出てきたのは意味不明な濁音の塊。男性は一瞬驚いた顔をして、苦笑いしながら去っていった。

子どもの頃から、ずっとそうだった。 男性に注目されるだけで、あるいは目が合うだけで、私の体は異常なほどの反応を示す。

小学生のときの休み時間、みんながいる前で一人の男子に話しかけられ、顔が真っ赤になったことがあった。それを見ていた男子たちに囲まれ「紬、リンゴみたい! 何かエッチなことでも考えてるんだー!」とはやし立てられたあの日から、私の時間は止まったままだ。

私だって、普通に恋をしたかった。少女漫画を読み耽り、いつか自分にも優しい王子様が現れて、熱い体温を感じるような恋に落ちる……。そんな妄想を、何度布団の中で繰り広げただろう。

けれど、現実は無情だった。高校、大学、社会人と、周囲が華やかな恋愛に身を投じるなか、私は男性に話しかけられるたびに顔を真っ赤にして逃げ出す「変な人」として、透明人間のような日々を過ごしてきた。

「私には、普通に恋をすることさえ許されない。このまま、誰の手も握らず、誰の体温も知らずに、一人で年老いていくんだ」

そう覚悟していた。25年間、男性経験ゼロ。処女であることは、私にとって守るべき純潔ではなく、誰からも選ばれなかった「欠陥」の証明のように感じられていた。

そんな私が、人生で最後の一歩として震える指でタップしたのが、マッチングアプリという、未知の扉だった。

第1章:0と1の間に隠した、25年分の本音

マッチングアプリ。それは、私のような人間にとって、唯一「防弾ガラス」越しに世界と触れ合える場所だった。

スマホの画面越しなら、顔が赤くなるのを必死に隠す必要がない。心拍数がどれだけ上がろうとも、相手には見えない。私は、これまで誰にも言えなかった25年分の想いを、丁寧な言葉にして紡ぎ始めた。

そこで出会ったのが、29歳の康介(仮名)さんだった。 彼のプロフィールは、どこか私と似ていた。華やかな交友関係を自慢するわけでもなく、ただ「静かに本を読んだり、散歩したりするのが好きです」と綴られていた。

初めてメッセージを交わした夜、私は驚いた。これまでのリアルな生活では、男性と3秒も会話が続かなかったのに、文字を通してなら、何時間でも話せるのだ。

「紬さんの言葉は、すごく澄んでいますね」

康介さんのその一言に、私はスマホを持ったまま、夜中の部屋で一人、真っ赤になった。でも、今度は嫌な赤さじゃなかった。心がじんわりと温かくなるような、そんな感覚。

一ヶ月ほどメッセージを続けた頃、康介さんから「一度、直接お話ししませんか」と誘いがあった。

怖かった。会えば、私のこの「赤面症」も「パニック」も、すべてバレてしまう。でも、このまま画面の中に閉じこもっていたら、私は一生、本物の体温を知ることはできない。

「……はい、お願いします」

私は、自分でも驚くほどの勇気を振り絞って、送信ボタンを押した。

第2章:壊れた言葉と、拾い上げられた「私」

デート当日。私は鏡の前で、何度もファンデーションを塗り重ねた。少しでも顔の赤みが目立たないように。でも、心臓の鼓動までは隠せない。

待ち合わせ場所に現れた康介さんは、写真よりもずっと穏やかで、柔らかな空気を持った人だった。

それなのに、私の「あがり症」という爆弾は、彼の優しい瞳を見た瞬間に爆発した。

(落ち着け、深呼吸、笑顔で挨拶を……!) 「……は、はっ、……はっじ……つ、つむっ……あ、はっ、はじめつ、ですっ……!」

またやってしまった。康介さんが「初めまして、紬さん。会えて嬉しいです」と微笑みかけてくれた瞬間、私の思考回路は激しくショートした。

「はじめまして」と「紬です」がドロドロに混ざり合い、情けない濁音となって口からこぼれる。顔は瞬く間に火を噴くように熱くなり、ファンデーションなんて何の役にも立たないほど真っ赤に染まったはずだ。

私は恥ずかしさのあまり、その場に蹲りたかった。

(ああ、やっぱり無理だ。自分の名前もまともに言えないなんて。嫌われた。変な奴だと思われた。帰りたい)

でも、康介さんは笑わなかった。

「紬さん、すごく緊張してくれてるんですね。なんだか嬉しいです。僕も、実は心臓がバクバク言ってるんですよ。ほら」

彼はそう言って、自分の胸元に手を当てて笑った。

「ゆっくりで大丈夫ですよ。今日はたくさん時間がありますから」

彼は私の「壊れた言葉」を、欠陥としてではなく、健気な努力として優しく拾い上げてくれたのだ。普通の女性にとって男性からの優しい言葉は、日常にある些細なシーンなのかもしれない。私にとっては、今まで誰もしてくれなかった「肯定」。目から思わず涙が溢れそうになった。

第3章:沈黙が「心地いい」という奇跡

その日のデートで、私は結局、まともに文章を話すことはできなかった。

カフェで注文をするときも店員さんの前でフリーズし、康介さんが代わりに注文してくれた。公園を歩いているときも、相槌は全部「はいっ!」という軍隊のような硬い返事。

普通なら「愛想が悪い」とか「つまらない」と思われても仕方のない振る舞いだった。

けれど、康介さんは一度も私を急かさなかった。

「紬さん、無理に話さなくて大丈夫ですよ。一緒に歩いて、同じ景色を見てるだけで、僕は十分楽しいですから」

彼は、私が真っ赤になっている時は、あえて遠くの景色を眺めてくれた。私が言葉に詰まって俯いていると、「あ、あの雲、犬の形に見えませんか?」と、私の緊張をそっと逃がすように話題を逸らしてくれた。

そして別れ際、彼は私の手の上に、自分の手をそっと重ねた。

「また、会ってくれますか?」

彼の大きな手の温もりが、私の暴走する心拍数を、不思議なほど優しく鎮めてくれた。私は初めて、「完璧に話せなくても、私はここにいていいんだ」と、心の底から救われた気がした。

それから何度もデートを重ねた。水族館の青い光の中で、動物園の賑やかさの中で、私たちはゆっくりと、本当にゆっくりと距離を縮めていった。 二ヶ月が過ぎる頃には、私の「あ、ああ……」という吃りは消え、時折、彼に向かって自分から笑いかけることができるようになっていた。

第4章:一生に一度の、神聖な夜

付き合い始めて三ヶ月。季節は冬に向かい、街は柔らかな灯りに包まれていた。

康介さんの部屋に初めて招かれた夜、私は朝から震えが止まらなかった。

思春期の頃から、ずっと憧れていた。 誰かから特別に愛され、その体温に包まれること。

でも同時に、私は確信していた。私のような「変な赤面女」の裸なんて、誰も見たくないはずだと。このまま、一生バージンのまま、誰にも触れられずに乾いていく。それが私の運命なのだと、自分に言い聞かせてきた。

「紬さん」 康介さんの部屋で、温かいココアを飲んだ後。彼が私の肩をそっと抱き寄せた。 彼の瞳は、どこまでも真剣で、どこまでも優しかった。

「僕は、紬さんのことが、たまらなく愛おしい。……大切にしたいんだ。いいかな?」

私の顔は、これまでで一番赤くなっていたと思う。でも、パニックではなかった。

「……はい。……私も、康介さんと、その……」

言葉は最後まで続かなかったけれど、私は自分から、彼の胸に顔を埋めた。

ベッドに入ると、暗闇の中でも彼が私を慈しむように見つめているのが分かった。私は怖かった。自分の不慣れな体が、彼をがっかりさせるのではないか。あがり症のせいで、大事な場面で変な声を上げてしまうのではないか。

けれど、康介さんの手のひらが私の頬を滑り、首筋、そして肩へと降りてきたとき、そのあまりの優しさに、私の全身の強張りがスッと解けていった。

「緊張してる? 大丈夫、僕を信じて」

彼の囁き声が耳に心地よく響く。

初めて触れ合う肌の熱。それは、私が25年間、妄想の中でしか触れることのできなかった、本物の「生身の体温」だった。

彼の唇が重なり、呼吸が混ざり合う。 指先が、私のコンプレックスだった真っ赤な肌を、宝物を扱うような手つきでなぞっていく。

ついに、体が重なり合った瞬間。私は、痛みよりも先に、圧倒的な「肯定」を感じた。

(ああ、私、生きていてよかったんだ。私は、誰かに受け入れられる存在だったんだ)

自分の中に、康介さんの存在をはっきりと感じる。それは、孤独だった私の人生に、初めて他者が深く、深く刻まれた瞬間だった。

25年間、分厚い壁を作って、誰も入れなかった私の心。その最後の鍵が、彼の優しさによって、いま、静かに開かれた。

「……あ、っ……康介さん、康介さん……っ」

声が、震える。でも、それはパニックの声じゃない。

あふれ出した涙が、枕を濡らした。

一生、誰とも交われないと思っていた。一生、愛される資格なんてないと思っていた。

そんな私の呪いを、彼は今、この肌の触れ合いを通して、ひとつひとつ解いてくれている。

「紬、大好きだよ。愛してる」

彼のその言葉が、私の心の最も深い場所に届き、弾けた。

私は真っ赤な顔のまま、泣きながら彼にしがみついた。

「私も……私も、ずっと、ずっと……会いたかった……っ」

それは、ただの性交ではなかった。私にとっては、この世界と仲直りするための、神聖な儀式だった。

彼の体温に包まれながら、私は初めて、自分が「完璧に普通の、愛されるべき女性」であることを、全身で確信した。

エピローグ:赤面は、愛の証

あれから1年。 私たちは今、並んで歩いている。

今でも私は、康介さんに見つめられると顔が赤くなる。でも、もうその顔を隠そうとは思わない。

「紬さん、また顔が赤くなってますよ。……可愛い」

康介さんが私の耳元で囁き、そっと手を繋いでくれる。

私は「あ、ああ、……あざます……じゃなくて、ありがとう」と、少し照れながら言い直した。

マッチングアプリ。それは、器用な人たちが効率よく相手を見つける場所だと思っていた。でも、違った。それは、私のように「言葉が外に出せない」不器用な人間が、内側にある25年分の本音を、一文字ずつ丁寧に誰かに届けるための、大切な「橋」だった。

不器用で、言葉が詰まって、顔が真っ赤になる私を、世界で一番美しいと言ってくれた人。 私は今日、この温かな彼の手を握りしめながら、最高の幸せの中にいます。