「まだいける」と思っていたのは、私だけだった――。
離婚してから3年、再婚を目指してマッチングアプリに飛び込んだ32歳の沙織(さおり・仮名)。気合十分で挑んだ初デートに選んだのは、20代の頃に褒められた「露出度高めの勝負服」。しかし、相手の男性の冷ややかな視線に、沙織は自分の勘違いを痛感することに。服装、メイク、持ち物……。失敗から学び、「大人の清潔感」という本当の正解に辿り着くまでの、笑いと涙の自分磨き奮闘記。
プロローグ:鏡の中の「20代の幻」
「よし、これなら……勝てる」
鏡の前で入念にデコルテのラインを整え、32歳の沙織(さおり)は自分に言い聞かせた。
離婚から3年。4歳の息子・陽太を育てる日々に追われ、いつの間にか「女」としての余裕を失っていた。
公園用のスニーカーと、泥汚れを厭わないデニム。それがいつしか彼女の正装となっていたのだ。
だが、マッチングアプリで出会った35歳の健人(仮名)と会う今日は、特別。
クローゼットの奥で大切に保管していたタイトなミニワンピース。肩が大きく開いたオフショルからは、白く塗った肌が大胆に覗く。
「ママになっても綺麗だね」
そう言われたい一心で、彼女は少し無理をして、過去の自分を引っ張り出してきた。
第1章:夜風に冷える、勘違いの肌
待ち合わせ場所に現れた健人は、清潔感のあるサックスブルーのシャツを着こなした爽やかな男であった。
しかし、沙織を見た瞬間の彼の表情を、彼女は一生忘れることはないだろう。
「……あ、どうも。今日は、すごい……華やかですね」
彼の目は沙織の顔ではなく、落ち着きなく露出した肩や、短すぎる裾から覗く膝に向けられていた。
洒落たイタリアンのテラス席。風が吹くたびにずり落ちる肩紐を直し、ミニスカートの裾を気にして何度も座り直す。
そんな沙織を見て、彼は気まずそうに視線を泳がせた。
「沙織さんは、その……アクティブな服装がお好きなんですね」
それが精一杯のフォローだと察したとき、背中に嫌な汗が流れる。
結局、会話は最後まで盛り上がらなかった。
大胆な露出は、彼にとって「色気」ではなく「場違いなマナー違反」として映ったのだった。
夜風が、露出した肌を容赦なく冷やしていく…。
第2章:連絡が途絶えた朝、鏡の中の「正体」
帰宅後、「今日は楽しかったです!」と送ったメッセージ。
それは、崖っぷちの彼女が放ったすがるような願いであった。
しかし、翌朝届いた返信はあまりにも簡素なものだ。
『昨日はありがとうございました。また機会があれば』
その一行を最後に、彼からの連絡はぷっつりと途絶えた。
スマホを放り出し、沙織は一人で声を上げて泣いた。
「やっと初デートまでこぎ着けたのにぃ」
けれど、いつまでも立ち止まってはいられないのが母親という生き物だ。
ふと鏡を見ながら、昨日の初デートでの服装を回想する。そこあったのは気合が空回りし、生々しい膝を晒した「痛い女」の姿だった。
「私、何を勘違いしてたんだろう……」
20代の武器が、30代では凶器になる現実。「若づくり」と「若々しさ」は似て非なるものなのだと、痛感せざるを得なかった。
第3章:猛勉強!「清潔感」への遠い道のり
ここから沙織のリベンジが始まる。まずは徹底的な情報収集だ。
夜な夜なスマホで「30代 初デート 失敗」「清潔感 とは」と検索し、最新のファッション誌を買い込んだ。
そこで突きつけられたのは、あまりに細かい「細部」へのこだわりである。
『30代の魅力は、肌の露出ではなく、手入れの行き届いた細部に宿る』
パサついた毛先、少しだけ剥げたネイル、角が擦れた古いバッグ。慌てて自分の手元を確認し、沙織は絶望した。
育児を言い訳に、そんな「細部」をすべて後回しにしていたのだから。
クローゼットを開き、今の自分を美しく見せてくれない服をすべて処分した。
代わりに選んだのは、肌を出すのではなく「ラインを綺麗に見せる」ミモレ丈のスカートだ。
美容院では艶を重視したカラーリングを頼み、短く整えた爪には馴染みの良いベージュを塗る。
それは自分を飾るためではなく、相手に「不快感を与えない」という敬意の表明でもあった。
第4章:最高のコーデで、リベンジの舞台へ
三ヶ月後、沙織は新しいマッチング相手、智也(仮名)との初デートを迎えた。
今回のテーマは、迷いなく「大人の清潔感」だ。
柔らかいミントグリーンのフレアスカートと、襟元の詰まった、けれど素材感の良いとろみブラウス。アクセサリーは小ぶりのパールを選び、メイクは素肌感を活かしたナチュラルな仕上がりに徹した。
「沙織さん、はじめまして。……すごく素敵な雰囲気の方ですね」
現れた智也の瞳は、真っ直ぐに彼女を見ていた。泳いでいない、濁りのない賞賛の眼差し。
食事中、彼は沙織の手元や服装をちらりと見て、優しく微笑んだ。
「沙織さんと話していると、すごく落ち着きます。清潔感があって、丁寧な暮らしをされているのが伝わってきますね」
肌を見せなくても、過去の自分を演じなくても、今の自分は正当に評価される。
その確信が、沙織の心を内側からじんわりと温めていった。
第5章:鏡の向こうに、新しい自分
智也と出会ってから、半年が過ぎた。 週末ごとに息子も交えて公園へ出かけ、穏やかな時間を共有する関係だ。
「ママ、今日のお洋服かわいい!」
陽太の言葉に、沙織は鏡を見て微笑む。
そこには、無理に若さを追いかけていた頃よりも、ずっと晴れやかで、凛とした「今の自分」が映っていた。
さらに月日は流れ、息子が小学校の入学式を迎えた。
隣には、スーツをビシッと着こなした智也の姿がある。
「沙織さん、入学おめでとう。これからも、家族として一緒に歩んでいこう」
あの日、過度な露出で空回りした自分に教えてあげたい。
正解は外側にではなく、自分を丁寧に扱うその心の中にあったのだと。
一歩ずつ、けれど確実に、彼らは新しい幸せの形を育んでいる。
エピローグ:幸せの「正解」
今、沙織の手元にあるのは、かつてのオフショルの服ではない。智也から贈られた、シンプルなデザインの腕時計である。
時を刻むその音を聞きながら、彼女は深く実感していた。 誰かのために自分を偽るのではなく、自分の「今」を愛することが、どれほど世界を輝かせるかということを。
もう彼女は迷わない。
最高の一着は、自分の心の中に、もう準備されているのだから。
「若づくり」を卒業して、「愛される私」へ。 もう一度恋がしたい。でも、何を着ればいい? どう振る舞えばいい? 迷えるシングルマザーのあなたへ。
今のあなたの魅力を最大に引き出すのは、露出ではなく「清潔感」という魔法。勇気を出して、自分らしい恋の「正解」を見つけてみてください。
