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中学校の部活における越境問題|越境生徒がいる理由?越境による影響は?

中学校の部活における越境問題|越境生徒がいる理由?越境による影響は? 少年スポーツ

中学校の部活動における「越境」。少年スポーツに携わっている人なら、耳にしたことがあるしょう。

高校入試のための越境入学や越境通学など、さまざまな理由や呼び名はありますが、部活のための「越境」も少なくありません。

この記事では、中学のバスケットボール部などで話題にされることが多い、部活のための越境について考えていきます。

なぜだめ?中学部活の越境とは?そもそも認められているルール?

中学の部活動による越境とは?そもそも認められているルール?

中学の部活の越境がなぜだめなのか、公立中学校では特別な理由がない限り校区外の学校へ入学・通学することが禁じられているためです。

部活動だけのために公立中学校を自由に選ぶことはできません。

ここでは、越境が許可されるケースを紹介し、中学の部活動による越境について解説します。

越境入学や通学が認められるケース

参考までに、校区外への入学や通学が認められるのは以下などの理由です(一部)。

  • 転居予定の学区の中学校へ転居前から通学する
  • 共働きなどで、親戚などの家がある学区の中学校に通学する
  • 中学在籍中に転居した場合そのまま現在の学校に通学する

上記から考えると「親戚などの家」「入学時に居住地」などが、越境の理由に利用されそうなキーワードではないでしょうか。

中学の部活動による越境とは?よくある例

中学の部活動による越境とは、家庭の事情があるのではなく部活のために校区外の中学校に通学することです。

私が耳にしたことのある中学の部活で越境している家庭の「よくある例」は、以下の4例です。

  1.  中学校の入学前に、入学したい中学校の校区内に家族ごと引っ越す
  2.  通学したい中学校の校区内へ一時的に引っ越して入学後に校区外の自宅に戻る
  3.  親戚や知人、友人などの家に住んでいることにして住所だけを移す
  4.  入学前後の時期だけ校区内に部屋を借りて住民票を移し、実際には校区外の自宅に住んでいる

1に関しては、校区内に家族ごと引っ越しているのでルール上は問題ありません

2は、「入学時に居住地」に該当するのでルール上は問題ないかもしれませんが、部活のためだけとなるとグレーゾーンという考え方もできます。

3と4は、どちらも実際に校区内に住んでいないので、校区外の中学の部活に入るため偽っていると判断されてもしかたありません。

中学部活の越境でよく耳にするのは「バスケットボール部」その理由

中学部活の越境でよく耳にするのはバスケットボール部

中学部活の越境でよく耳にするのは、男子・女子のバスケットボール部ではないでしょうか。

ただ、他の人気スポーツ野球やサッカーなどでは中学での越境をあまり聞きません。

これは、野球もサッカーもU15世代のクラブチームが多くあるためと考えられます。

世界でもっとも競技人口が多く人気も高いとされるバスケットボールですが、日本では野球やサッカーよりも競技人口が少ないためU15世代のクラブチーム数も多くありません。

以下は、2020年のU15世代のバスケチーム数です。

2020年全国のU15バスケットボールチーム数

【男子チーム数】
●中学校の部活数:5,729
●クラブチーム数:515

【女子チーム数】
●中学校の部活数:5,649
●クラブチーム数:507
参考:JAB公式HP

このようにクラブチーム数が少ないバスケットボールでは、クラブチームが多い野球やサッカーのようにクラブチームを自由に選べる環境がありません。

したがって、中学バスケットボールでは部活チームが中心になるため、越境が多い傾向にあると考えられるのです。

中学の部活の越境が与える影響

中学の部活の越境が与える影響

前章のように、さまざまな方法で部活動の越境が行われているようですが、部活動や生徒などにどのような影響があるのでしょうか。

ここでは、以下3つ影響について考えていきます。

  • 部活のチームへの影響
  • 保護者への影響
  • 他チームへの影響

越境による部活チームの影響|地元の子供たちの試合出場機会が減少

チームへの影響として考えられるは、地元の選手が試合に出れなくなることです。

もちろん越境選手の力量によりますが、一般的に越境選手はそのスポーツの経験者なので、試合に出る機会を多く与えられます。

そのため、中学校からそのスポーツを始めた子供や、本来なら試合に出れるレベルにある選手の出場機会に影響が出ることも少なくありません。

それにより、チーム内で派閥ができたり孤立する選手が出たりするケースも考えられます。また、不満を感じ退部する生徒も出てくるでしょう

文部科学省「中学校学習指導要領」では、部活動に以下のような意義をもたせるように説明しています。

教育課程外の学校教育活動と教育課程の関連が図られるように留意するものとする。特に,生徒の自主的,自発的な参加により行われる部活動については,スポーツや文化,科学等に親しませ,学習意欲の向上や責任感,連帯感の涵養等,学校教育が目指す資質・能力の育成に資するものであり,学校教育の一環として,教育課程との関連が図られるよう留意すること。
※引用元:中学校学習指導要領

越境生徒の入部により部活動に対して我慢を強いられた生徒は、学校教育の一環である「学習意欲の向上」の機会を奪われたことになるかもしれません。

保護者への影響|学校への不信感や保護者同士の分裂

保護者によっては、学校や顧問、コーチなどに不信感を持つケースもあります。不信感を持たれると保護者からの協力を得るのが難しくなり、部活の運営に大きな影響が出てしまうでしょう。

また、「本当はうちの子が試合に出れたはずなのに」と、越境生徒やその保護者に対し良くない感情を抱くケースも珍しくありません。保護者同士の関係がギクシャクすると、越境生徒の保護者は孤立してしまう可能性もあります。

他チームへの影響

「間違えなく」とはいえませんが、越境生徒が多いチームが同じ地区にあると大会で勝ち進むのが難しくなります。

他チームの選手や保護者からは、「不公平」「ずるい」「そこまでして勝ちたいか」「恥ずかしくないのか」など、不平不満を耳にすることも珍しくありません。

他チームからの不平不満はチームに対してだけでなく、中学校や保護者・選手、大会を運営する協会や教育委員会、自治体などにまで向けられるケースもあります。

ほとんどが、越境を「許しているのか」「黙認しているのか」「誘導したのではないか」「しっかり調べろ」などです。

不正な越境の可能性があるにも関わらず、何の調査も対策もしない組織にも不満は向けられています

例えば、虚偽の申請をしているのであれば違法行為と考えられるかもしれません。

ただ、校区内に引っ越して住民票を取得したなら入学後に校区外の自宅に戻っても「中学在籍中に転居した場合そのまま現在の学校に通学」に該当します。組織としては簡単に不正とは指摘できないのかもしれません。

実際は部活のためという不正な理由でも調査などは難しい側面があります。夫婦の別居による引っ越しなど家庭の事情による可能性もあるので、プライバシーに踏み込んだ調査は難しいのかもしれません。

中学の部活で越境するか迷っている?越境の判断材料

中学の部活で越境するか迷っている?越境の判断材料

まず前提として、偽って申請する越境通学は、検討すること自体やめたほうがいいでしょう。その方法しか取れないなら、越境は考えてはいけません

公立中学の部活動に越境という言葉はない!越境は検討自体がNG

簡単にいうと、そもそも公立中学で部活のための越境は認められていないので、公立中学の部活動において「越境」などという選択肢自体が存在しません

どうしても入学したい公立中学があるなら、越境ではなく校区内に引っ越したうえで通学するのが正しい考え方です。それ以外で、今住んでいる校区外の中学校に部活目的で入学する方法はありません。

これらのことを理解したうえで、校区外の学校への入学を検討してください。

誘われていないのに校区外の公立中学に行くのはやめるべき

声(スカウトのようなもの)がかかっていないなら、学区外の学校へ行くのはやめるべきです。

公立中学自体、スカウトなどあってはならないことですが…。中学の指導者側からではなくても、所属するスポーツ少年団の指導者などから薦められるケースもあるようです。

ただ、クラブチームの少ないスポーツでは、理解できないことではありません(ダメなことですが…)。保護者や選手も、少しでもレベルの高い環境に身を置きたい気持ちもわかります。しかし、それは正式に校区内に引っ越せることが前提です。

保護者が子供の将来を考えるのは良いことですが、誘われてもいないのに学区外の学校に通わせようとするのは間違いです。

そもそも、公立中学校は選ぶことができません。もちろん引っ越して通うのは自由ですが、誘われてもいないのに部活のためにわざわざ引っ越すのはリスクです。

中学校で実績を重ねて、高校から声がかかるような選手になるように努力しましょう。

時代の流れで良い方向に変わる可能性も!

時代の流れで良い方向に変わる可能性も!

前述したクラブチーム数が少ないバスケットボールでは、Bリーグの発足などにより競技人口が増加傾向にあります。反対にクラブチーム数が多い野球の競技人口は減少傾向です。

今までは部活が中心だったU15バスケットボールも、クラブチームが増えたり、中学のバスケ部がクラブチーム化されたりなど、より競技しやすい環境整備がされるかもしれません。

正直、U15の大半を占める中学部活には校区の問題があり、競技レベルの向上は難しい面もあるでしょう。

日本のバスケットボールレベル全体の底上げのためには、U15世代のレベルアップが必要と考えます。

 

自治体によっては学区外の中学校を選択できる地区もありますし、校区内の中学校に該当の部活がないときに越境が認めらたという話も耳にしたことがあります。このように、自治体によってはルールの中で柔軟な対応をしている地域もあるのです。

もし、正当な理由があるなら、自治体に相談してみるのも1つの方法かもしれません。おそらく、部活だけの問題では難しいと思いますが…。